JPYCとは、日本円の価値に連動した、ERC20規格の前払い式支払い手段のステーブルコインです。分かりやすく説明すると、日本円と同等の価値をもつ仮想通貨です。
少しでも仮想通貨に触れたことがあれば、テザー(USDT)やUSDコイン(USDC)という名前は聞いたことがあるでしょう。これらは仮想通貨全体の変動に左右されない、米ドルに連動したステーブルコインです。
米ドルに連動したステーブルコインは古くからあるのですが、日本円に連動したものはこれまでほとんど存在していませんでした。しかし最近になってJPYCという名前をよく見かけるようになりました。
JPYCはVプリカに交換することが可能であるため、日本円と同じような感覚で使うことができます。特に、仮想通貨取引所で利益を上げたユーザーからは、仮想通貨から日本円への出口が増えたという点で評価されています。しかも、JPYC購入時の手数料も無料です。
今回はそのJPYCについての情報と使い方を紹介していきます。
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JPYCってなに?
日本円に連動したステーブルコインであるJPYCは、発行会社が、1JPYC=1円としてVプリカに換金できることを保証しています。このため、発行会社が価値を保証する限り、1円と同じ価値を持つと考えることができます。
発行方法にも特徴があり、発行会社に送金を行うことで、指定したウォレットに対応する金額のJPYCが振り込まれる仕組みです。MetaMask(メタマスク)などの個人ウォレットのアドレスも指定可能なため、仮想通貨取引所の取引口座を保有していなくても、JPYCの保有が可能です。
仮想通貨を個人ウォレットに入れる場合は、国内の仮想通貨取引所で仮想通貨を購入し、それを送金するという手順を取る人が多いですが、JPYCの場合は国内の取引所を経由しなくてもよく、使用するネットワークによっては手数料も完全無料というメリットがあります。
しかし、手数料を完全無料にするために普及しているとはいいがたいネットワーク(ShidenまたはMatic)を使う必要があるなど複雑になっているので、「入口」、つまり入金の便利さでいえば、それほどメリットがあるとは言えません。
JPYCの最大のメリットは、やはり「出口」の部分です。
JPYCは、日本円でも仮想通貨(ビットコイン)でも購入できるため、仮想通貨でJPYCを購入し、Vプリカ(プリペイド型のVISAカード)に変換することで、仮想通貨を法定通貨のようにショッピングなどに利用することが可能になります。
プリペイド型のVISAカードであるVプリカは、VISA対応業者であれば全国どこでも利用することが可能です。
クレジットカードとほぼ同じ感覚で利用できますが、海外FX業者への入金や格安SIMの契約など、クレジットカードの利用で本人確認を兼ねているサービスには使えません。
しかし仮想通貨取引所を介さずに実質日本円として使うことが出来るわけですから、大変画期的な仕組みです。
そもそもステーブルコインとは?
JPYCはステーブルコインに分類されます。ステーブルコインとは、法定通貨に連動した資産価値を持つ仮想通貨です。様々な仕組みで様々なステーブルコインがあり、それぞれ特徴が違います。
ステーブルコインには大きく分けて、ドルや円などを担保とした「法定通貨担保型」と、「仮想通貨担保型」、担保がなくアルゴリズムによって価格を安定させる「アルゴリズム型」があります。
JPYCやテザー(USDT)、USDコイン(USDC)はいずれも法定通貨担保型ですが、この中でもさらに、「払戻約束型」と払い戻し不可の「プリペイド型」に分けられます。
払戻約束型 | USDC、USDT |
---|---|
プリペイド型(払戻不可) | JPYC |
最も有名なステーブルコインのテザー(USDT)は払戻約束型ですが、これは、テザーの保有者が、テザーの発行会社に米ドルとの交換を請求すれば、いつでも同じレート(1ドル=1USDT)で米ドルと交換できることが保証されているという仕組みです。
一方、JPYCは法定通貨担保型のプリペイド型(前払い式支払い手段)に分類されます。「プリペイド型」という用語自体を初めて聞いたという人も多いでしょう。あまり馴染みのない方式ですが、どのような特徴があるのでしょうか?
なぜJPYCは払戻不可型なの?
JPYCは前払式支払手段と呼ばれる、商品券やカタログギフト券、磁気型やIC型のプリペイドカード、インターネット上で使えるアマゾンギフト券のようなプリペイドカードに近い仕組みになります。JPYCは通貨建資産であるため、法的には仮想通貨ではないという扱いになります
なぜ払戻不可型のステーブルコインとしたのか、JPYCの最大の疑問ですね。その理由は日本の厳しい法律にあります。
日本では払戻約束型でステーブルコインを発行してしまうと、為替取引法に抵触する恐れがあります。銀行業や資金移動業の免許が必要となり、気軽に事業を行えない障壁が日本にはあるのです。
そこでJPYCは前払式支払手段のステーブルコインとして発足しました。
JPYCをVプリカに変換するにはどうするの?
Vプリカとして利用するには、保有するJPYCを発行会社に送金し、Vプリカに変換してもらいます。
海外取引所での仮想通貨取引で得た利益をJPYCにしたい場合、①仮想通貨からJPYCに変換するための手続きと、②JPYCからVプリカに変換するための手続きの2つが別々に必要です。ビットコインなどの仮想通貨を一気にVプリカにすることはできないため、少しややこしいです。
具体的な手順は下記の記事で解説しています。
ビットコインなどの仮想通貨をJPYCに変換する機能は、現在テスト段階にあり、JPYC公式サイトではまだ利用できません。
現在でも利用できる、仮想通貨をJPYCに変換する方法は下記の2つです。
・分散型取引所DEXで購入したJPYCを利用する
・Linksアプリを利用する
JPYCはまだ知名度が低く、Binance(バイナンス)やBybit(バイビット)などの大手取引所では扱われていません。そのため、ビットコインやイーサリアムなどの仮想通貨でJPYCを購入するためには、DEXを利用することになります。
ただし、JPYC公式サイトでは、DEXなどは二次流通扱いになり、二次流通の場合1JPYC=1円として利用できることを保証しないと明記されています。しかし、プレスリリースではUniswapでの流動性供給量が増えたことがアピールされていますし、二次流通は一切交換しない方針というわけではないようです。
UniswapなどのDEXは、上場前の審査がなく誰でも上場させることができてしまう仕組みを取っていることもあるため、偽物が出た際の対策としての注意書きなのではないかと思われます。
まだまだ知名度のない仮想通貨なので、1JPYC=1円のはずが、DEXでは0.8円で取引されることもあるようで、価値が低く評価されがちのようです。
公式の換金レートよりも安く購入できるわけですが、ステーブルコインであることを考えるとやや不安になる値動きですね。
リスクを避けるために、公式のお墨付きのあるJPYCを仮想通貨で購入したい場合「Links」という仮想通貨対応SNSアプリを使用します。このLinksは、SNSアプリに仮想通貨のウォレット機能が付属したものです。アプリ内ではビットコインからJPYCに変換できますので、①一旦Linksにビットコインを送金し、②そのビットコインをJPYCに変換し、③そのJPYCをVプリカに変換するという方法を取ることができます。
Vプリカへと交換できるJPYCですが、そのままではネット決済にしか対応していないため不便を感じることがあります。しかしPayPayなどの一部の電子マネーでは、Vプリカでチャージをすることができます。PayPayであれば全国のコンビニや飲食店で利用することもできるので、かなり自由に使うことができます。
JPYCのそのほかのメリット
JPYCの主なメリットはVプリカとして利用できることですが、そのほかにも下記のメリットがあります。
✔本人確認(KYC)不要
✔購入時の手数料なし
✔マルチチェーンに対応・送金手数料補助あり
本人確認不要
先ほど説明したように、JPYCは、ユーザーが発行会社の銀行口座宛に日本円を送金することで購入することが可能です。その際購入したJPYCの送り先をMetaMask(メタマスク)のような個人ウォレットにすれば、仮想通貨取引所を一切経由することなくJPYCが手に入ります。
国内の仮想通貨取引所では本人確認(KYC)が必須なので、仮想通貨を購入・送金する前に手間のかかる手続きを済ませる必要がありますが、JPYCは仮想通貨取引所を経由しないので、もちろん取引所のKYCは不要です。
さらに、JPYCはプリペイド型であり、日本の法律上は仮想通貨ではないという扱いなので、JPYC公式サイトでも購入前の本人確認は必要ありません。メールアドレスや電話番号だけで気軽に口座開設できる海外の仮想通貨取引所と同様の感覚で利用できます。
購入時の手数料なし
JPYCには購入時の手数料はありません。つまり、1万円分の入金をすれば、1万円分のJPYCが手に入ります。
JPYC運営側も利益を出す必要があるはずですので、Vプリカの手数料分が利益になっていると思われます。
マルチチェーンに対応・送金手数料補助あり
JPYCは、イーサリアム、ポリゴン(旧マティック)、Shiden、xDaiの4種類のブロックチェーンに対応しています。マルチチェーンに対応していることにより、自分の好きなチェーンを選んで利用することができます。
イーサリアムのガス代が高騰していることから、ポリゴンやShidenが使われることが多いです。さらに、ポリゴンとShidenでは送金手数料無料のキャンペーンが行われており、送金手数料相当分の仮想通貨が同時に入金されます。
ただ、送金手数料相当分がもらえるといっても、Shidenなら1SDN(2022年3月のレートで約90円)が入金されるだけなので、何十回も送金する人でなければ少額のため換金もしづらく、メリットは感じにくいです。
SDNは2022年3月現在、CoinMarketCapのランキングで600位程度の仮想通貨なので、少量もらっただけであれば、今後の値上がりに期待してそのままウォレットに入れておくのがいいかもしれません。
送金先として選べるチェーンはイーサリアム、ポリゴン(旧マティック)、Shiden、xDaiの4種類だけですが、Links内のJPYCは、Linksで使われている「Mixinネットワーク」のJPYCとなっています。
JPYCのデメリット
JPYCのデメリットにはどのようなものがあるか見ていきましょう。
✔払戻不可型なため、日本円に換金不可
✔規制の厳格化リスク
✔運営会社の倒産リスク
✔買い方やVプリカへの交換方法がやや特殊
✔最高金額が10万円なので高額取引には向かない
✔DeFiの知識を必要とする
JPYCのデメリットと言えば、まずは直接日本円に換金することができない点です。
さらに、JPYCのようなステーブルコインおよび仮想通貨には法的議論の真っ最中であるため、規制の厳格化の可能性が無いとは言い切れません。しかし、規制前にはある程度の猶予期間が設けられるケースがほとんどなので、ある日突然使えなくなるといったことはないでしょう。
最も大きなデメリットは、運営会社の倒産リスクです。JPYCの価値は運営会社が1JPYC=1円での交換を保証することで保たれています。そのため、もし運営会社に倒産などのトラブルが起きてしまうとJPYCの価値は暴落してしまいます。今のところ運営会社の情報はあまり公表されておらず、よくわからない状態ですので、メジャーなステーブルコインと比較するとリスクは高めといえます。
運営会社の倒産リスクは、ステーブルコイン全般に当てはまる問題です。そのため、テザー(USDT)などでも、運営会社の財務状況などに注目が集まっています。
また、これまでに説明したように、JPYCは購入したりVプリカへ交換するのにやや複雑な手続きが必要です。一つ一つの手続きはシンプルで間違えにくいものですが、複数の手続きが必要という点で、面倒に感じる人も多いでしょう。
Vプリカは上限金額が決まっており、1枚10万円です。そのため、例えば100万円をVプリカにしたい場合、10枚申請する必要があり、高額取引ではさらに手間が増えるというデメリットもあります。
そして知識を必要とするのもデメリットのひとつです。ステーブルコインのJPYCを購入しても、使いこなせなければ意味がありません。ウォレットの接続、DEXでのスワップ、ステーキングの方法など、様々な知識が必要になりますが、DiFiはそれだけ自由度の高い世界とも言えますね。
JPYCを面白そう、使ってみたいと興味を持ちながらも購入に踏み切れない人たちには、DeFiそのものの仕組みや使い方を理解していない方も多いでしょう。
慣れないことをしてお金を紛失してしまうリスクがあるわけですから、その気持ちは大変よく分かります。まずは1万円分など、少額からJPYCを購入してみてはいかがでしょうか。
規制の厳格化は視野に入れておこう
日本円での実用的なステーブルコインはJPYCしかまだ登場していないことから、今のところステーブルコインへの明確な規制はありません。しかし今後更に注目を浴びれば本人確認(KYC)の導入などが考えられます。
日本は先進的なテクノロジーに対して、消極的な姿勢を見せることが多々あります。かつて仮想通貨において重要なマーケットであった日本ですが、現在はご存じの通り日本は仮想通貨において大きな影響力を持ちません。
日本は仮想通貨に対する金融庁の締め付けが厳しく、海外取引所に比べると非常に自由度の低い運営を強いられています。仮想通貨FXでは25倍まで可能であったレバレッジが、ものの数年で最大2倍へと規制されてしまいました。
JPYCにおいても、国の政策次第で規制は厳しくなることを覚悟しておきましょう。
特にJPYCのKYCが不要な件に関しては、今のうちだけであると思っておいて良いのではないでしょうか。税金逃れに利用される恐れがあるものはKYCが必須ですから、利用者が増えれば自然とKYCが義務付けられる可能性があります。
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