仮想通貨を贈与すると税金は?家族間でも注意したい基本ルールを解説

  • 「持っている仮想通貨を家族にあげたいんだけど、税金はかかるの?」
  • 「少額なら贈与税ってかからないって聞いたけど、仮想通貨も同じかな?」
  • 「税金のことって複雑だし、後でトラブルにならないか心配…」

そう思っていませんか? 仮想通貨の保有者の中には、家族や親しい友人に、ご自身の仮想通貨を「贈与(プレゼント)」したいと考える方もいるかもしれません。特に、価格が上昇した仮想通貨を贈与して、家族で一緒に恩恵を受けたい、あるいは税金対策として贈与を検討したい、といったニーズがあるでしょう。

しかし、仮想通貨の贈与には、実は「贈与税」という税金がかかる可能性があります。「家族間のプレゼントだから大丈夫でしょ?」「少額ならバレないかな?」と安易に考えてしまうと、後で税務署から指摘を受け、多額の税金を請求されるといったトラブルに発展する可能性もゼロではありません。

この記事では、仮想通貨を贈与した場合に「贈与税」がどのように関わってくるのか、その基本的なルールについて、2025年現在の日本の税法に基づき、初心者の方にも分かりやすい言葉で解説します。贈与税がかかるタイミング、非課税枠、そして贈与する際・受け取る際の注意点まで、皆さんが知りたいポイントに絞ってお伝えします。難しい税法の専門的な話は最小限に、「これだけ知っておけば、あなたは仮想通貨の贈与に関する税金の基本ルールを理解し、適切な対応ができる」というポイントに絞ってお伝えします。

この記事を読めば、仮想通貨の贈与に関する税金の疑問や不安が解消され、家族間での資金のやり取りも安心して行えるようになるはずです。

目次

仮想通貨の贈与には「贈与税」がかかる!

まず結論からお伝えします。あなたが保有している仮想通貨を、他の人(家族や友人など)に「贈与(プレゼント)」した場合、その贈与を受けた側に「贈与税」という税金がかかる可能性があります。 これは、仮想通貨だけでなく、現金や不動産、株式などの財産を贈与した場合にも共通する日本の税金のルールです。

贈与税は「もらった側」にかかる税金

贈与税は、個人から財産を「もらった人(受贈者)」に対して課される税金です。

贈与税の基本的な仕組み

  • 対象: 個人から個人へ、無償で財産が移転した場合に課されます。
  • 納税義務者: 財産を「もらった人(受贈者)」が納税義務者となります。あなたが仮想通貨を「あげた側(贈与者)」であっても、税金を負担するのは原則として「もらった側」です。
  • 年間110万円の非課税枠: 贈与税には「暦年贈与(れきねんぞうよ)」という制度があり、1月1日から12月31日までの1年間で、もらった財産の合計額が110万円以下であれば、贈与税はかかりません。 この110万円は「基礎控除額」と呼ばれ、非課税枠となります。

仮想通貨の贈与と贈与税の考え方

  • あなたが仮想通貨を誰かに送金し、相手がそれを無償で受け取った場合、その受け取った時点での仮想通貨の「時価(日本円換算での価値)」が贈与税の計算対象となります。
  • その時価が、他の贈与された財産と合算して、1年間で110万円を超える場合に贈与税がかかります。

例:AさんがBさんに1年間で以下の財産を贈与した場合

贈与日財産の種類数量その時点の時価(日本円換算)
2025年3月1日ビットコイン0.05 BTC70万円
2025年8月1日日本円50万円50万円
年間合計120万円

この場合、Bさんは1年間で合計120万円の財産を贈与されました。基礎控除額110万円を超える10万円(120万円 – 110万円)に対して贈与税がかかります。

贈与税の課税タイミング:もらった時点の時価

仮想通貨の贈与税は、贈与を受けた時点(仮想通貨を受け取った時点)の「時価(日本円換算での価値)」で計算されます。

課税タイミングのポイント

  • 贈与を受けた時点の時価: 仮想通貨の価格は日々変動するため、贈与された瞬間の価格を正確に把握しておく必要があります。
  • その後の価格変動は影響しない: 贈与を受けた後に仮想通貨の価格が上昇したり下落したりしても、贈与税の計算には影響しません。あくまで「もらった時点」の時価で評価されます。

したがって、贈与を受けた場合は、その時の仮想通貨の時価を必ず記録しておきましょう。

贈与税の計算方法と注意点

贈与税は、1年間の贈与額が110万円の非課税枠を超えた場合に課税されます。税率も累進課税で、贈与額が大きくなるほど税率が高くなります。

贈与税の計算方法(特例贈与財産と一般贈与財産)

贈与税の計算には、「特例贈与財産」と「一般贈与財産」という2つの区分があります。税率が異なるため、どちらに該当するかで税額が変わってきます。

贈与税の計算区分

  • 特例贈与財産: 直系尊属(祖父母や父母)から、その年の1月1日において18歳以上の者(子・孫など)への贈与を指します。税率が優遇されています。
  • 一般贈与財産: 特例贈与財産に該当しない贈与を指します。夫婦間、兄弟間、いとこなどの親族間、あるいは他人への贈与などがこれに該当します。

贈与税の速算表(抜粋)

課税価格(贈与された財産の総額 – 110万円)税率(特例贈与財産)控除額(特例贈与財産)税率(一般贈与財産)控除額(一般贈与財産)
200万円以下10%0円10%0円
300万円以下15%12.5万円15%12.5万円
400万円以下20%22.5万円20%25万円
600万円以下30%62.5万円30%65万円
1,000万円以下40%162.5万円40%175万円
1,500万円以下45%287.5万円45%250万円
3,000万円以下50%412.5万円50%400万円
4,500万円以下55%640万円55%650万円

(※2025年5月現在の情報。速算表は国税庁のウェブサイトなどで確認できます。実際の計算には、その他の控除や特例がある場合があります。)

計算例: 夫から妻へ仮想通貨500万円分を贈与した場合(一般贈与財産)

  1. 贈与財産総額: 500万円
  2. 基礎控除額: 110万円
  3. 課税価格: 500万円 – 110万円 = 390万円
  4. 速算表(一般贈与財産)で確認: 390万円は「400万円以下」の区分
  5. 税率20%、控除額25万円を適用
  6. 贈与税額: 390万円 × 20% – 25万円 = 78万円 – 25万円 = 53万円

このように、贈与額が大きくなるほど税率も高くなる累進課税が適用されます。

確定申告の必要性

贈与税の確定申告は、1月1日から12月31日までの1年間で、基礎控除額(110万円)を超える財産を贈与された場合に必要になります。

贈与税の確定申告

  • 申告義務者: 財産を「もらった人(受贈者)」が、翌年の2月1日から3月15日までの間に、税務署に贈与税の確定申告書を提出し、納税する必要があります。
  • 申告不要な場合: 年間に贈与された財産の合計額が110万円以下であれば、贈与税はかからず、贈与税の確定申告も不要です。

たとえ贈与税がかからない場合でも、記録として残しておくことが大切です。

仮想通貨を贈与する際・受け取る際の注意点

仮想通貨を贈与する側も、受け取る側も、税金以外の面でも注意すべき点があります。

贈与する側の注意点:利益確定の税金!

あなたが仮想通貨を誰かに「贈与」した場合、その仮想通貨が購入時よりも値上がりしていれば、贈与した時点で「利益が確定した」とみなされ、所得税の課税対象となる可能性があります。

贈与と利益確定の税金(みなし譲渡課税)

  • 例えば、あなたが10万円で買ったビットコインを、価値が20万円になった時に、家族に贈与したとします。
  • この場合、税法上、「あなたがそのビットコインを20万円で売却し、その20万円で日本円を一度得て、その日本円を家族に贈与した」とみなされます。
  • したがって、利益は20万円(贈与時の時価) – 10万円(取得価額) = 10万円となり、この10万円が「雑所得」としてあなたの所得税の計算対象となります。
  • これを「みなし譲渡(じょうと)」による課税と呼びます。

仮想通貨の贈与は、贈与税だけでなく、贈与した側の所得税も発生する可能性があるという二重の税金リスクがあることを理解しておく必要があります。この点は、通常の現金や不動産の贈与とは大きく異なるため、特に注意が必要です。

仮想通貨の税金について、より詳しく知りたい場合は、こちらの記事を参考にしてください。
【要注意】仮想通貨の税金、ぶっちゃけどうなの?面倒だけど無視できない話

受け取る側の注意点:ウォレットアドレスと安全な保管

仮想通貨を贈与された場合、安全に受け取り、保管することが重要です。

受け取る際の注意点

  • 正確なウォレットアドレスを伝える: 送金ミスを防ぐため、あなたが受け取りたい仮想通貨のウォレットアドレスを、贈与してくれる相手に正確に伝えてください。アドレスを1文字でも間違えると、送金した仮想通貨は失われます。
  • 対応するウォレットの準備: 受け取る仮想通貨に対応したウォレット(取引所の口座、ソフトウェアウォレット、ハードウェアウォレットなど)を準備しておきましょう。
  • ネットワークの確認: 送金元がどのブロックチェーンネットワーク(例:イーサリアム、BNB Smart Chainなど)を使って送金するのかを確認し、あなたのウォレットも同じネットワークに対応しているか確認しましょう。
  • 秘密鍵/リカバリーフレーズの厳重管理: ウォレットで仮想通貨を受け取る場合、そのウォレットの秘密鍵やリカバリーフレーズを安全に管理することが必須です。これらが漏洩すると、資産を失います。

ウォレットアドレスの確認方法や、送金時の注意点については、こちらの記事も参考にしてください。
ウォレットアドレスの確認方法!仮想通貨の「住所」の見つけ方をマスター

贈与の記録を正確に残しておく

贈与税の申告が必要になった場合や、将来の税務調査に備えるために、贈与に関する記録を正確に残しておくことが重要です。

記録しておくべき情報

  • 贈与した(された)日時: 仮想通貨を送金した(受け取った)正確な日時。
  • 贈与した(された)仮想通貨の種類と数量: どの種類の仮想通貨を何枚贈与した(された)か。
  • 贈与時点の仮想通貨の時価(日本円換算): これが贈与税の計算基準となります。
  • 贈与者と受贈者の氏名・関係: 誰から誰へ贈与されたのか。
  • 贈与の目的(任意): なぜその贈与が行われたのか、記録として残しておくことも有効です。

これらの情報を、スプレッドシートやメモなどに記録しておきましょう。特に、1年間の贈与額が110万円に近づく場合は、記録を徹底することが重要です。

仮想通貨の贈与税に関するQ&A

ここでは、仮想通貨の贈与税に関して、初心者の方が抱きがちな疑問に、Q&A形式でまとめました。

夫婦間や親子間でも贈与税はかかる?

はい、夫婦間や親子間(成人している子へ)であっても、年間110万円を超える仮想通貨を贈与した場合、贈与税はかかります。

  • 贈与税の基礎控除額110万円は、贈与を受ける人一人あたり、1年間で、誰から贈与された財産であっても合算して適用されます。
  • したがって、夫から妻へ、親から子へ、祖父母から孫へといった家族間の贈与であっても、その年にもらった財産が合計で110万円を超えれば、贈与税の申告・納税義務が発生します。
  • ただし、夫婦間で20年以上の婚姻期間がある場合の居住用不動産の贈与など、一部の特例が適用される贈与もありますが、仮想通貨の贈与には直接関係しません。

家族間だからといって税金がかからないわけではないため、注意が必要です。

贈与税を払わないとどうなる?

贈与税の申告・納税義務があるにもかかわらず、申告を怠ったり、過少に申告したりすると、税務署からの指摘を受け、重いペナルティが課される可能性があります。

贈与税を払わない場合のリスク

  • 無申告加算税: 申告期限までに申告しなかった場合に課されます。
  • 過少申告加算税: 申告した税額が本来の税額より少なかった場合に課されます。
  • 重加算税: 意図的に所得を隠したり、事実を偽ったりしたと判断された場合に課されます。税率が非常に高いです。
  • 延滞税: 納税が遅れた場合に、その遅れた日数に応じて課される利息のようなものです。

税務署は、仮想通貨取引所の情報(入出金履歴など)や、ブロックチェーン上の取引履歴などを追跡して、税金を徴収することが可能です。安易な気持ちで申告を怠ると、後で多額のペナルティ税を支払うことになりかねません。

贈与税の非課税枠を有効活用するには?

贈与税の基礎控除額110万円は、暦年(1月1日~12月31日)で贈与された財産に適用されます。この非課税枠を有効活用する方法として、「毎年、非課税枠内で贈与を行う」という方法があります。

非課税枠の活用例

  • 例えば、毎年110万円分の仮想通貨(その時点の時価で評価)を、家族に贈与していく。
  • これを数年間にわたって継続することで、将来的に相続税の対象となる財産を計画的に減らしていくことができます。
  • ただし、毎年同じ時期に同じ金額を贈与していると、税務署から「定期贈与」とみなされ、全体が「連年贈与」と判断されて贈与税の対象となるリスクがあります。これを避けるためには、贈与の時期や金額を少しずつ変える、贈与の都度「贈与契約書」を作成するなど、継続的な贈与ではないことを明確にする工夫が必要です。

贈与税の非課税枠の活用は、資産の移転において非常に有効な手段ですが、税務上の細かいルールや注意点も存在します。計画的に行う場合は、必ず税務署や税理士などの専門家へ相談することをおすすめします。

まとめ

今回は、仮想通貨を贈与した場合に贈与税がどのように関わってくるのか、その基本的なルールと注意点について解説しました。

  • 仮想通貨を誰かに「贈与」した場合、その贈与を受けた側(受贈者)に「贈与税」がかかる可能性がある
  • 贈与税には年間110万円の非課税枠(基礎控除額)があり、1月1日〜12月31日までの1年間でもらった財産の合計額が110万円以下なら贈与税はかからない。
  • 贈与税は、仮想通貨を受け取った時点の「時価(日本円換算)」で計算される。
  • 夫婦間や親子間であっても、110万円を超える贈与には贈与税がかかる
  • 【最重要】仮想通貨を「贈与する側」にも税金がかかる可能性がある! 贈与時の仮想通貨の価値が取得時より値上がりしている場合、贈与した時点で「利益確定」とみなされ、所得税が課税される(みなし譲渡課税)
  • 贈与を行う際も、受け取る際も、送金ミスに注意し、ウォレットアドレスとネットワークを正確に確認する
  • 贈与に関する記録を正確に残しておくことが、将来の税務調査に備える上で重要。
  • 贈与税の申告義務があるにもかかわらず怠ると、無申告加算税や延滞税などのペナルティが課される。
  • 年間110万円の非課税枠を毎年活用する「暦年贈与」も可能だが、税務上の注意点がある。

仮想通貨の贈与は、税金に関する二重のリスク(贈与した側の所得税と、もらった側の贈与税)があるため、非常に複雑です。安易な判断で贈与を行わず、この記事で解説した基本ルールと注意点をしっかり理解し、特に高額な贈与を検討する場合は、必ず税務署や仮想通貨の税務に詳しい税理士に相談することをおすすめします。

仮想通貨の税金全般について、より網羅的な情報や、確定申告の義務、怠った場合のリスクなどを知りたい場合は、こちらの記事も参考になるはずです。

【要注意】仮想通貨の税金、ぶっちゃけどうなの?面倒だけど無視できない話

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

目次