仮想通貨取引所のデリバティブ取引でレバレッジをかける場合は、当初証拠金(必要証拠金)と維持証拠金という二つの計算方法が存在します。特に重要なのは維持証拠金で、口座の資金が維持証拠金を下回るとロスカットが発動します。
レバレッジ取引の仕組みはFXよりもかなりややこしくなるため、よく理解しておきましょう。
海外取引所はそれぞれ制度や呼称が少しずつ異なりますが、今回はBinance(バイナンス)を例に、注意すべきポイントをまとめました。
当初証拠金と維持証拠金
海外取引所のレバレッジの計算には、「当初証拠金」と「維持証拠金」の2種類が使われます。
当初証拠金 | 新規のポジションを持つために口座内に保有している必要のある資金 |
維持証拠金 | ポジションを保有している間に、口座内に保有している必要のある資金 |
仮想通貨取引所によって呼称が異なる場合もあり、Binance(バイナンス)では「当初証拠金」ですが、Bybit(バイビット)では「必要証拠金」と呼ばれます。
当初証拠金が足りない場合はそもそもポジションを持つことができないため、ロスカットにかかわる数値は維持証拠金となります。
維持証拠金は当初証拠金より少なく、通常当初証拠金の半分に設定されています。
ポジションを開くには、資金に余裕を持たせる必要があるんだ
Binance(バイナンス)の例で見てみます。
永久先物契約のBTCUSDT(USDT建てのビットコイン取引)、想定元本(オープンポジションの量)が50,000USDT以下の場合だと、初期証拠金率は0.8%となります。
想定元本に初期証拠金率(0.8%)をかけたものが基本の初期証拠金となり、ポジションを持つには、証拠金残高がこの金額を上回っている必要があります。
さらに、エントリーしたい方向と同じ方向に含み損が発生していた場合は、その分必要な初期証拠金が高くなります。これは、含み益・含み損を加味した有効証拠金で、証拠金を判定するFXと同じ考え方ですね。
一方、同じ銘柄、同じ想定元本でも、維持証拠金は0.4%となり、半分になります。この維持証拠金が証拠金残高を下回ると、先ほど解説した通りロスカット(強制清算)となります。
ロスカットは維持証拠金で判定
海外取引所では、証拠金残高が維持証拠金を下回った場合にロスカットが発生します。
維持証拠金を証拠金残高で割った数値は、Binance(バイナンス)では「マージン率」と呼ばれ、100%に到達するとポジションはロスカット(強制清算)されます。なお、この証拠金残高には未決済損益も含まれます。
マージン率=維持証拠金÷証拠金残高×100
証拠金維持率は、低下するとロスカットになりますが、マージン率は反対です。マージン率が低いほどロスカットの可能性が低くなります。
維持証拠金は、仮想通貨の価格に、オープンポジションの量に応じて決まる維持証拠金率をかけて算出します。オープンポジションの量が増えるほど、維持証拠金率が高くなるため、利用できるレバレッジが低くなります。
具体例として、ビットコイン(BTC)が30,000ドルのときに1単位のポジションを持ち、維持証拠金率が0.4%だった場合で計算してみます。証拠金残高が240ドルだった場合、「30,000×0.004÷240×100」の計算でマージン率は50%です。その後、含み損が拡大して証拠金残高が120ドルに減少した場合、「30,000×0.004÷120×100」の計算でマージン率は100%となり、ロスカット(強制決済)が発動します。
なお、オープンポジションの量は基本的にエントリーしたときの仮想通貨の価格にポジション量をかけたものと考えて大丈夫ですが、仮想通貨取引所やサービス区分によって計算方法は微妙に異なります。
Binanceでは「想定元本」と呼びます。COIN-M先物の場合計算方法がやや複雑になるので、別のページで解説しました。
ポジション保有量が増えるとレバレッジが制限される
仮想通貨取引所のレバレッジ取引では、ポジション保有量が増えれば増えるほど、レバレッジは制限されます。
Binance(バイナンス)の無期限契約で、各レバレッジで保有できるポジション量をまとめました。
レバレッジ | 保有可能量 |
1倍 | 無制限 |
2~10倍 | 20,000,000USDT |
11~20倍 | 5,000,000USDT |
21~50倍 | 1,000,000USDT |
51~100倍 | 250,000USDT |
101~125倍 | 50,000USDT |
レバレッジ101~125倍で取引できるのは50,000USDTまでですが、一旦レバレッジ125倍で最初のポジションを持った後、追加でポジションを持った結果レバレッジが100倍に制限されたとしても、最初のポジションにはずっと125倍が適用されます。
突然引き下げられるわけじゃないから安心だね!
どのレバレッジで注文が出せるかは、注文パネルの上部にも表示されます。
海外取引所でレバレッジ規制の動き
海外取引所では、最近レバレッジ規制の動きが強まっています。FTXでは最大レバレッジが引き下げられましたし、Binance(バイナンス)も、最大レバレッジそのものは125倍で変わらないものの、新規ユーザーについては、口座開設から60日後まで、レバレッジが20倍に制限されるルールが設けられました。
60日経過後もすぐに125倍のレバレッジが利用できるわけではなく、徐々に引き上げられるということです。
仮想通貨は値動きが激しいため、実質的には20倍程度の低レバレッジで取引した方が安全ですが、レバレッジが低いと、万が一暴落した場合でもホールドするという選択肢がなくなってしまいます。
Bybit(バイビット)やMEXC(旧MXC)では、まだハイレバレッジを提供しているので、ハイレバレッジを求める人は、レバレッジルールの強化を行っていない海外取引所を利用するといいでしょう。
また、仮想通貨の中でも、Exness(エクスネス)などは200倍のハイレバレッジで仮想通貨FX(暗号資産FX)を行うことができます。
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