- 「暗号資産(仮想通貨)取引で結構利益が出たんだけど、これって事業所得になるのかな?」
- 「雑所得だと税率が高くなるって聞いたし、事業所得にできたら税金が安くなるの?」
- 「税金のことって難しくてよく分からないけど、損しない方法は知りたい!」
そう思っていませんか? 暗号資産(仮想通貨)取引で利益が出た場合、原則として税金(所得税)の対象となり、自分で損益を計算して確定申告をする必要があります。しかし、多くの個人投資家の場合、その利益は「雑所得(ざつしょとく)」として扱われます。一方で、一部の事業として積極的に暗号資産取引を行っている人の中には、「これは事業所得になるのではないか?」と考える方もいます。なぜなら、事業所得として認められると、税金計算の方法や控除できる経費の範囲が変わり、結果として税金が安くなる可能性があるからです。
「自分の暗号資産の利益は雑所得?事業所得?」「事業所得にできたらどれくらい税金が変わるの?」「税金のことなんて面倒くさいけど、知っておかないと損するんでしょ…」と、不安や疑問を感じている初心者の方や、税金計算は苦手だけどお得な情報は逃したくない「ずぼらさん」もいるのではないでしょうか。
この記事では、暗号資産取引で得た利益が、日本の税法上どのように分類されるのか、主に「雑所得」と「事業所得」のどちらになるのか、そしてそれぞれの税金計算方法や、事業所得と認められた場合のメリット・デメリットについて、2025年現在の情報に基づき、初心者の方にも分かりやすい言葉で解説します。難しい税法の専門的な話は最小限に、「これだけ知っておけば、あなたは暗号資産の利益がどの所得になるか理解でき、税金について考える第一歩を踏み出せる」というポイントに絞ってお伝えします。
この記事を読めば、暗号資産の税金に関する基本的な知識が身につき、あなたの利益がどの所得に該当しそうか、そして税金についてどのように考えれば良いのかが明確になるはずです。
暗号資産の利益は、原則「雑所得」になる!
まず、日本の税法における暗号資産取引で得た利益の基本的な扱いは、「雑所得(ざつしょとく)」です。これは、多くの個人投資家が暗号資産取引で得た利益に適用される区分であり、税金計算のスタート地点となります。
雑所得とはどんな所得?(他の所得と合算される)
日本の所得税法では、所得を10種類に分類しています。雑所得は、その10種類の所得区分のいずれにも当てはまらない所得の総称です。
雑所得に含まれる所得の例
- 公的年金等に係る所得
- 副業による所得(原稿料、アフィリエイト収入など)
- 暗号資産取引で得た所得(売却益、マイニング報酬、ステーキング報酬、レンディング報酬など)
- その他、利子所得、配当所得、不動産所得、事業所得、給与所得、退職所得、山林所得、譲渡所得、一時所得のいずれにも該当しない所得
このように、暗号資産取引で得た利益は、一般的にはこの「雑所得」に分類されます。
雑所得の税金計算方法(総合課税で税率が上がるかも)
雑所得は、原則として「総合課税(そうごうかぜい)」の対象となります。これは、その年の他の所得(給与所得、事業所得など)と合算した合計額に対して所得税率が決まる仕組みです。
雑所得の税金計算のポイント
- 他の所得と合算: 暗号資産取引で得た雑所得は、給与所得など、その年にあなたが他に得た所得の合計額に合算されます。
- 累進課税: 所得税率は、合計所得金額が高くなるほど税率が高くなる「累進課税(るいしんかぜい)」が適用されます。税率は、所得に応じて5%から最大45%まで段階的に上昇します。
- 住民税: 所得税とは別に、住民税も課税されます。住民税率は、所得の金額にかかわらず、原則として10%(所得割)です(均等割を除く)。
つまり、暗号資産の利益が雑所得として扱われる場合、その利益が他の所得と合算されることで、あなたが納める所得税・住民税の税率が高くなる可能性があります。特に、給与所得が高い会社員の方が、暗号資産でまとまった利益を得た場合、税率が大きく上がり、手取りが減ってしまうと感じることがあります。これが、「暗号資産の税金は高い」と言われる主な理由の一つです。
所得税・住民税の税率(個人の総合課税)
課税される所得金額 | 所得税率 | 控除額 | 住民税率(所得割) |
---|---|---|---|
195万円以下 | 5% | 0円 | 10% |
195万円超 330万円以下 | 10% | 97,500円 | 10% |
330万円超 695万円以下 | 20% | 427,500円 | 10% |
695万円超 900万円以下 | 23% | 636,000円 | 10% |
900万円超 1800万円以下 | 33% | 1,536,000円 | 10% |
1800万円超 4000万円以下 | 40% | 2,796,000円 | 10% |
4000万円超 | 45% | 4,796,000円 | 10% |
※所得税と住民税を合わせると、最大で55%(復興特別所得税を除く)の税率が適用される可能性があります。
「事業所得」と認められる場合がある?(税金がお得になるかも)
暗号資産取引による所得は原則雑所得ですが、その取引が「事業として行われている」と税務署に認められる場合は、例外的に「事業所得(じぎょうしょとく)」に分類される可能性があります。事業所得として認められると、税金計算の方法や、認められる経費の範囲、そして損失の取り扱いが変わるため、結果として税金が安くなる場合があります。
事業所得とはどんな所得?(税法上の定義)
事業所得とは、農業、漁業、製造業、卸売業、小売業、サービス業その他の事業から生じる所得のことです。
事業所得の定義(税法上の解釈)
- 税法上の「事業」とは、単に反復継続的に所得を得るだけでなく、営利性・有償性があり、独立性(自己の危険と計算において行うもの)があり、反復継続性、規模、労力・時間、精神的・肉体的活動、技術・設備といった要素を総合的に判断して判定されます。
- 暗号資産取引の場合も、単なる趣味や一時的な取引で所得を得るだけでなく、その活動を本業または副業として継続的に行い、生活の糧とする意図や、社会的な地位といった要素も考慮されることがあります。
暗号資産取引が「事業として行われている」と認められるかどうかの判断は、非常に複雑であり、明確な線引きがあるわけではありません。個々の状況を総合的に判断することになります。
事業所得と認められる税務上のメリット
暗号資産取引による所得が事業所得として認められると、以下のような税務上の大きなメリットがあります。
事業所得のメリット
- 他の所得との損益通算が可能: 暗号資産取引で損失が出た場合に、その損失を給与所得や他の事業所得といった、他の所得区分の所得と相殺(損益通算)することができます。これにより、全体の所得金額を減らし、結果として納める税金を減らせます。(雑所得の損失は、原則として他の所得区分の所得とは損益通算できません。)
- 損失の繰越控除が可能: 事業所得で生じた損失は、その年の所得から控除しきれなかった場合、翌年以降3年間にわたって繰り越して、将来の所得と相殺することができます。これにより、将来利益が出た場合の税金負担を軽減できます。(雑所得の損失は、原則として翌年以降に繰り越すことはできません。)
- 経費として認められる範囲が広がる可能性: 雑所得でも一部の経費(取引手数料など)は認められますが、事業所得の場合は、事業を行う上で直接的かつ必要不可欠な費用であれば、より幅広い費用が経費として認められる可能性があります。(例えば、暗号資産取引のために購入した高性能なパソコンの減価償却費、通信費、情報収集のためのセミナー参加費、事業に関する書籍代、場合によっては事務所の家賃の一部なども。)
- 青色申告特別控除が受けられる: 事業所得者として青色申告を選択し、所定の要件を満たす帳簿付け(複式簿記)を行うことで、最大65万円または55万円の「青色申告特別控除」を受けることができます。これにより、所得金額を直接減らせます。
- 専従者給与を計上できる: 家族に事業を手伝ってもらっている場合、一定の要件を満たせば、支払った給与を「青色事業専従者給与」として必要経費に計上できます。
これらのメリットは、暗号資産取引で継続的に大きな利益を得ている方にとって、税金負担を大きく軽減できる可能性を秘めています。
事業所得と認められるための判断基準(グレーゾーンが多い)
では、具体的にどのような場合に暗号資産取引が「事業所得」と認められるのでしょうか? 残念ながら、税法上、暗号資産取引が事業所得となるための明確な基準や、〇〇をすれば事業所得になる、といった絶対的な線引きはありません。 税務署が個々の状況を総合的に判断することになります。
事業所得と判断される可能性を高める要素(例)
- 取引の規模と頻度: 非常に大規模な金額で、かつ高頻度、継続的に取引を行っている。
- 利益の継続性: 一時的な利益ではなく、継続的に、安定した収益を暗号資産取引から得ており、それが生活の主要な糧となっている。
- 取引手法の専門性: 専門的な知識や分析に基づいて、計画的かつ組織的に取引を行っている。
- 取引に費やす時間と労力: 暗号資産取引に、本業または副業として、他の活動と明確に区別できるほどの多くの時間や労力を費やしている。
- 社会的な地位: 暗号資産に関する情報発信(例えばブログやYouTubeなど)を積極的に行い、それが事業として認知されている、といった側面。
- 事務所や設備の有無: 暗号資産取引のために専用の事務所を設けたり、高性能な取引設備(PC、モニターなど)を導入したりしている。
- 経費の発生状況: 暗号資産取引に関連して、継続的に様々な経費が発生している。
これらの要素を総合的に判断して、「これは単なる資産運用(投資)ではなく、事業として反復継続的に行われている」と税務署が判断した場合に、事業所得として認められる可能性があります。しかし、これらの要素を満たしていれば必ず事業所得になる、というわけではありません。
「事業所得になるかどうか」の判断は非常に難しく、最終的には税務署の判断に委ねられる部分が大きいため、専門家である税理士に相談することが強く推奨されます。
事業所得と雑所得の税金計算方法の違い
暗号資産取引による所得が事業所得と認められた場合、税金計算の方法は雑所得の場合とは異なります。
所得の計算方法の違いと経費の範囲
事業所得の計算方法は、雑所得の計算方法と基本的に同じ「収入 ー 必要経費」ですが、認められる経費の範囲が大きく広がります。
所得計算方法と経費範囲の比較
- 雑所得: 総収入金額 ー 必要経費
- 必要経費として認められるのは、取引手数料や損益計算ツールの利用料など、直接的な費用に限定される傾向が強いです。
- 事業所得: 総収入金額 ー 必要経費
- 必要経費として認められる範囲が非常に広いです。事業を行う上で直接的かつ必要不可欠な費用であれば、家賃(一部)、通信費、消耗品費、減価償却費(PCなど)、旅費交通費、交際費、税理士への報酬なども認められる可能性が高まります。
この「必要経費として認められる範囲の広さ」が、事業所得の大きなメリットであり、課税対象となる所得金額を減らせる要因となります。
確定申告の方法の違い(青色申告の活用)
事業所得がある場合、確定申告の際に「青色申告(あおいろしんこく)」または「白色申告(しろいろしんこく)」を選択できます。青色申告は、白色申告に比べて複雑な帳簿付けが必要になりますが、税金上の大きなメリットを享受できます。
青色申告の主なメリット
- 青色申告特別控除: 所定の要件を満たす帳簿付け(複式簿記)を行うことで、最大65万円または55万円の青色申告特別控除を受けることができます。これにより、所得金額を直接減らせ、税金が安くなります。
- 専従者給与: 家族に事業を手伝ってもらっている場合、一定の要件を満たせば、支払った給与を「青色事業専従者給与」として必要経費に認められます。
- 損失の繰越: 前述の通り、事業で生じた損失を翌年以降3年間繰り越して、将来の所得と相殺できます。
- 貸倒引当金: 売掛金などが回収不能になった場合に備えて、一定額を必要経費として計上できる制度です。
これらのメリットを受けるためには、事前に税務署に「所得税の青色申告承認申請書」を提出し、日々の取引を複式簿記など所定の方式で正確に帳簿付けする必要があります。この帳簿付けは、雑所得の場合よりも複雑になりますが、会計ソフトなどを活用すれば、ずぼらさんでも対応できる可能性があります。
仮想通貨取引による所得が事業所得として認められた場合、青色申告を選択することで、雑所得の場合よりも税金負担を大幅に軽減できる可能性があります。しかし、その分、帳簿付けの手間が増えるというデメリットもあります。
税金計算ツールも、事業所得や青色申告に対応したものは高機能で、利用料金も高くなる傾向があります。しかし、正確な計算のためにはツール活用も有効です。
▶ 仮想通貨税金計算ツールどれが良い?初心者向け選び方と使い方ガイド
暗号資産の事業所得に関するQ&A
ここでは、暗号資産取引が事業所得になることに関して、初心者の方が抱きがちな疑問に、Q&A形式でまとめました。
副業で暗号資産取引をしている場合は事業所得になる?
副業として暗号資産取引を行っている場合も、その取引の規模や頻度、継続性、収益性、費やす時間などを総合的に判断して、事業所得となる可能性はゼロではありません。
- 例えば、給与所得を得ながら、それとは別に、独立して反復継続的に暗号資産取引を行い、そこから安定した収益を得ており、その活動が社会的な地位を持つと判断されるような場合などです。
- ただし、給与所得者が、単に資産運用の一環として暗号資産取引を行っている場合は、たとえ利益が多くても、通常は雑所得として扱われます。
副業で暗号資産取引を行っており、事業所得になるかどうか判断に迷う場合は、税務署や税理士に相談することをおすすめします。特に、青色申告のメリットを享受したい場合は、事業開始の届出や青色申告承認申請書の提出が必要になるため、早めの相談が重要です。
法人化すると税金は安くなる?
個人の所得税率(累進課税で最大45%)は、所得が大きくなると非常に高くなります。一方、法人の場合、所得に応じた法人税率が適用され、個人の所得税率よりも税率が低くなる場合があります。 また、法人化することで経費として認められる範囲がさらに広がったり、社会保険料の負担の調整、役員報酬の仕組みなど、様々な税制上のメリットを享受できる可能性があります。
法人化のメリット(税金面)
- 所得税率よりも法人税率の方が低い場合がある。
- 経費として認められる範囲が広い。
- 給与所得控除の活用(法人から自分に給与を支払う場合)。
- 損失の繰越期間が長い(9年間)。
しかし、法人化には、法人設立の手続きや費用、法人維持のためのコスト(税理士費用、社会保険料、決算費用など)、複雑な税務手続きといったデメリットもあります。特に、法人が暗号資産を保有していると、まだ売却していない「含み益」に対しても税金がかかる(期末時価評価課税)という大きな注意点があります。
暗号資産取引を事業として行う規模が大きい場合や、将来的にさらに拡大していく予定がある場合は、法人化を検討するメリットがあるかもしれません。ただし、法人化の判断は非常に複雑であり、税金面以外のメリット・デメリットも考慮する必要があるため、必ず専門家である税理士に相談してください。
税務署は暗号資産の取引をどうやって把握するの?
税務署は、暗号資産取引に関する情報を把握するために、様々な手段を用いています。
税務署の把握方法(例)
- 国内の暗号資産交換業者からの情報提供: 日本の金融庁に登録されている暗号資産交換業者は、一定の条件下で、顧客の年間取引報告書(支払調書など)を税務署に提出することがあります。これにより、税務署は誰がどれくらいの取引を行っているか把握しやすくなります。
- 国際的な情報交換(CRSなど): 外国の金融機関等を利用した国際的な脱税や租税回避を防止するための国際的な情報交換の仕組み(CRS: 共通報告基準)があり、これにより海外の暗号資産取引所の情報も日本の税務当局に提供される可能性があります。
- 税務調査: 申告内容に不審な点が見られたり、高額な取引があるにも関わらず無申告であったりすると、税務署による税務調査の対象となる可能性があります。税務調査では、銀行口座の入出金履歴なども確認されます。
- ブロックチェーン上のデータ分析: ブロックチェーンの取引履歴は公開されているため、専門的な分析技術を用いることで、資金の流れを追跡することが可能です。
「バレないだろう」という安易な考えは非常に危険です。税務署は暗号資産取引の実態把握に努めていますので、ルールに従って適正に申告することが賢明です。
まとめ
今回は、暗号資産取引で得た利益が、日本の税法上どのように分類されるのか、主に「雑所得」と「事業所得」のどちらになるのか、そしてそれぞれの税金計算方法や、事業所得と認められた場合のメリット・デメリットについて解説しました。
- 暗号資産取引で得た利益は、原則として「雑所得」に分類され、「総合課税」の対象となる。所得が多いほど税率が高くなる(累進課税)。
- 暗号資産取引が「事業として行われている」と認められる場合は、例外的に「事業所得」に分類される可能性がある。
- 事業所得と認められるメリットは、他の所得との損益通算、損失の繰越控除、経費として認められる範囲の拡大、青色申告特別控除など。
- 事業所得と認められるかは、取引の規模や頻度、継続性、収益性、費やす時間などを総合的に判断され、明確な基準はない(グレーゾーンが多い)。
- 事業所得の場合、確定申告で青色申告を選択することで税金負担を軽減できる可能性があるが、複雑な帳簿付けが必要。
- 事業規模が大きい場合は、法人化も税金対策として検討可能だが、法人には含み益課税のリスクや法人維持コストといったデメリットもあるため注意。
- 「事業所得になるか判断できない」「税金計算が複雑」といった場合は、暗号資産の税務に詳しい税理士に相談することが最も確実で安心な方法。
暗号資産の税金、特に事業所得になるかどうかの判断は非常に複雑ですが、あなたが納めるべき税金を正しく理解し、適切な申告を行うことは、安心して暗号資産取引を続ける上で非常に重要です。この記事が、あなたの税金に関する疑問を解消し、税務について考えるきっかけとなれば幸いです。
暗号資産の税金に関するより網羅的な情報や、確定申告の義務、怠った場合のリスクについては、こちらの記事も参考になるはずです。