Bybit(バイビット)で2021年8月に、「二重資産マイニング」のサービスの取り扱いがスタートしました。その後続々と対象銘柄が増え、2022年には「デュアル資産投資」に名称変更されました。
Bybitの公式サイトでは「最大90%の年間利回り(APY)」とうたわれていますが、どのようなサービスなのでしょうか?
この記事では、Bybitのデュアル資産投資の仕組みややり方について解説します。
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デュアル資産投資とは?
デュアル資産投資(旧二重資産マイニング)は、イーサリアム(ETH)やビットコイン(BTC)などの仮想通貨、またはテザー(USDT)を分散型取引所(DEX)であるUniswap(ユニスワップ)に預け入れることで、利子を得ることができるサービスです。
ただし、預け入れている間にその仮想通貨の価値が下落した場合、元本が減った状態で返却されてしまうため、これがデメリットとなります。
かなり複雑な仕組みになるため、ここからは、各特徴を詳しく解説します。
✔USDT、または他の仮想通貨を預け入れ
✔払い戻しの仮想通貨は異なる
✔元本割れする場合も
✔利回り表示は年利
USDT、または他の仮想通貨を預け入れ
デュアル資産投資(旧二重資産マイニング)の基本的な仕組みは、UniSwapに流動性を提供する代わりに報酬を受け取るイールドファーミングです。
一般的なイールドファーミングは、ある仮想通貨Aと別の仮想通貨Bをペアで預け入れ、報酬を得る代わりに変動損失のリスクを負うものです。
イールドファーミングでは預け入れ時と異なる枚数の仮想通貨が返却されるため、仮想通貨AとBをそのままの枚数で保有していた方が、合計の資産価値が高くなっていた状態を変動損失と呼びます。
一方Bybit(バイビット)のデュアル資産投資では、預け入れるのはイールドファーミングのペアのうち片方(つまり1種類)の仮想通貨になる点が、一般的なイールドファーミングとは異なります。
現在20種類以上の銘柄でデュアル資産投資が行えますが、すべてUSDTとのペアとなっているため、その銘柄の仮想通貨そのものを預け入れるか、USDTを預け入れるかを選択することになります。
払い戻しの仮想通貨は異なる
デュアル資産投資(旧二重資産マイニング)では、預け入れを開始した時点のUSDT建てでの仮想通貨の現物価格を「基準価格」、預け入れを終了した時点でのUSDT建てでの仮想通貨の現物価格を「決済価格」とし、決済価格が基準価格を上回ったかどうかで、払い戻しがどちらの仮想通貨になるかが決まります。
USDTで預け入れたらUSDTで払い戻されるというわけではなく、ペアとなっている仮想通貨で払い戻される場合もあります。
ペアの仮想通貨で払い戻し | 決済価格 < 基準価格の場合 |
---|---|
USDTで払い戻し | 決済価格 ≥ 基準価格の場合 |
上記の基準で払い戻される仮想通貨が決まるので、「価値が落ちた方の仮想通貨で返ってくる」というイメージになります。
元本割れする場合も
デュアル資産投資(旧二重資産マイニング)で付与される利回りは、仮想通貨を預け入れた日に確定します。一方で、預け入れた資産がそのまま返ってくるか、減るかは、払い戻しの日の仮想通貨の現物価格に基づいて「決済価格」が決定するまで確定しません。
デュアル資産投資のおおまかな仕組みとしては、預け入れた資産の価値が上昇したら、元本が減少します。一方で、預け入れた資産の価値が下落したら、元本の減少が発生せず、利回り分全額を自分の利益とすることができます。
資産価値が上昇したとしても下落したとしても、利回りがもらえることは変わらないので、元本が減少してしまった場合でも、その減少分と利回りを相殺してトータルでプラス収支になる可能性はあります。
一方、残念ながら利回りよりも元本の減少分が大きかった場合は、損失が出てしまいます。
年間利回りは、期間や銘柄に応じて100%台から400%台に設定されています。
預け入れる仮想通貨が選べるので、USDT建てでの仮想通貨価格が上昇すると予想した場合は、USDTで預け入れると、利回りをそのまま受け取れる可能性が高まります。逆に、その仮想通貨が下落すると予想した場合は、その仮想通貨で預け入れるといいでしょう。
なお、元本がどのくらい減るかの計算式は、預け入れた仮想通貨によって異なりますが、「預け入れ通貨がどれだったかにかかわらず、価値が下がった方の仮想通貨で払い戻される。それによって損失が発生する」ということを理解しておくと、イメージしやすくなります。
ETHで説明すると、下記のようになります。
損失パターン | 受け取り金額 | |
ETH建て | ETH上昇 | ステーキング額 × 基準価格 × (1+ 利回り)のUSDT |
USDT建て | ETH下落 | ステーキング額 ÷ 基準価格 ×(1+利回り)のETH |
ETHを預け入れた場合は、ETHが上昇すると損失が発生します。
預け入れ時の基準価格が3,000USDT、引き出し時の決済価格が4,000USDTとなった場合で考えると、イーサリアムで1ETHを預け入れていた場合、受け取り金額は「1ETH×3,000(基準価格)」に利回りをかけた金額になります。ETHをそのまま保有していたら、1ETHが4,000USDTになっていたはずなので、利回りが付与されるにしても、元本分でかなりの減少となってしまいますね。
一方、USDTを預け入れた場合は、ETHが下落すると損失が発生します。
預け入れ時の基準価格が3,000USDT、引き出し時の決済価格が2,000USDTとなった場合で考えると、1USDTを預け入れていた場合、受け取り金額は、「ステーキング額(3,000USDT)÷基準価格(3,000USDT)」、つまり1ETHに利回りをかけたETH建てでの金額になります。こちらも、預け入れた3,000USDTをそのまま保有していたのに比べて、元本が2,000USDTに下がっているので、利回り分を差し引いても損失となります。
利回り表示は年利
利回りの表示は年利なので、例えば、預け入れ期間が1日のプロダクト(投資商品)について、255.5%の利回りと表示されていた場合、預け入れたことで付与される利息は、「255.5%÷365日=0.7%」となります。
10万円を1日預け入れた場合は、「10万円×0.7%」の計算で700円の利益になるということですね。
この利回りが、元本減少のリスクに見合うかどうかという判断が必要な投資商品となります。
デュアル資産投資のメリット・デメリット
デュアル資産投資(旧二重資産マイニング)は、とにかく複雑な仕組みだということが分かりましたね。ここからは、デュアル資産投資のメリット・デメリットについてまとめます。
メリット
デュアル資産投資(旧二重資産マイニング)のメリットは、とにかく簡単なことです。Bybit(バイビット)を通じてUniswap(ユニスワップ)のイールドファーミングに参加していることになるので、Uniswapに直接預け入れた方が収益としては高いです。
ただ、デュアル資産投資は、Bybitのウォレットに資金を入れたまま、クリック3回で簡単に預け入れられ、かつ1日単位で気軽に預け入れを終了することができるので、Uniswapに直接預け入れる場合と比較してかなり便利に利用できます。
1日単位なので、トレードする予定がない日のみ、という使い方もできますね。
デメリット
デメリットとしては、下記の点があります。
・原資割れの可能性がある
・収益計算がややこしい
・毎日行うことはできない
200%を超えるような高利回りの場合、このデュアル資産投資に限らず、当然原資割れのリスクがあります。
USDT建てを選択した場合はペアとなる仮想通貨が上昇したときに、USDT建てを選択した場合はその仮想通貨が下落したときに損失の可能性が出てきます。
この2パターンでも損失にならない場合もありますが、価格が自分に不利な方向に大きく動き、得られる利回りを超えてしまったときに実際に原資割れが発生します。
しかも、Bybitのマイページで確認できる情報では、原資割れしているかどうかの判断がつきにくいというデメリットもあります。
先ほど説明したように、デュアル資産投資は仕組み上、利回りをそのまま受け取れるときには投資した仮想通貨(各仮想通貨またはUSDT)で、利回りから値動きによる損失分を引いた金額を受け取るときは投資した仮想通貨とは逆の仮想通貨で受け取ることになります。
そのため、例えばこの場合は約3,511USDTを預け入れて約0.9ETH受け取ったことになりますが、収益が出ているかどうかすぐには分かりませんよね。
預け入れが終了した時点のレート3,895USDTに0.9ETHをかけると、約3,506USDTになるので、微妙に(5USDT分)損失になっています。
今回、イーサリアムの値動きは、3,942から3,895USDTで、急激に変動したわけではありませんが、それでも原資割れしてしまいました。かなりリスクはあるということですね。
デュアル資産投資のやり方
デュアル資産投資(旧二重資産マイニング)のやり方は簡単です。
Bybit(バイビット)トップページ上部のメニューから「資産運用」をクリックし、「デュアル資産」を選択してください。
好きなプロダクト(投資商品)・期間を選択して「選ぶ」をクリックしてください。
USDTを預け入れるかペアとなる仮想通貨を預け入れるかで、受け取れる利益が変わってきますので、選択してから金額を入力し、「購入する」をクリックします。どちらを預け入れるかの切り替え方法はわかりにくいのですが、金額の右端から選択できます。
なお、どの期間まで預け入れれば収益が受け取れるかは事前に確認しておくのがおすすめです。右側に表示される「払い戻し日時」が収益を受け取れる時間になります。これは、グリニッジ標準時10時前後に設定されているため、この時間に+9時間した時間、つまり夜19時前後が日本時間での受け取り時間になります。
これは、デュアル資産投資のスタート時間が固定で日本時間夜19時になっているからです。そのため、この時間以降に預け入れると、その日のスタート時間は終わってしまっているため、翌日の夜19時にスタートとなります。
スタート時間から数えて丸1日(または3日、5日)預け入れた後に収益が発生するので、日付としては2日分空いてしまうこともあります。
注文が完了した後に表示される画面で「注文を見る」をクリックすると、自動的に「資産」ページの「デュアル資産投資」部分に推移し、注文状況が確認できます。
「払戻日時」を後で確認したいときには、この注文確認ページに表示されます。
収益を上げる確率を上げる方法
デュアル資産投資(旧二重資産マイニング)は原資割れのリスクがかなりあります。ただ、決済期限の時点でレートが上昇するか下落するかの予測を当てれば、高確率で収益を上げることができます。
ETHで説明すると、ETHが上昇すると予想した場合はUSDT建て、ETHが下落すると予想した場合はETH建てにすると、利回りをそのまま受け取ることができます。
予測する際は、注文時点のレートを見てどうなるかを考えるようにしましょう。例えば、長期ではETHが上昇すると予測したとしても、注文時点の買われ過ぎの状態であれば、払い戻しの日時には一時的に下落している可能性も考える必要があります。
また、リスクを下げるために、資金を半分に分けて、ETH建てとUSDT建て両方を購入する方法もあります。
デュアル資産投資の収益確認方法
デュアル資産投資(旧二重資産マイニング)の収益は、「資産」メニューの「資産運用アカウント」で確認できます。デュアル資産投資のタブを選択して、「すべての注文」を表示させると、過去に注文した一覧が表示されます。
収益額として表示される金額には原資分が含まれていますので、純粋に利回りを把握したいなら、原資分を差し引く必要があります。原資分は「預入額」の欄に表示され、今回は「100.7ドル」なので、1日預けた利回りは0.7ドルとなります。
デュアル資産投資では、商品を購入したときに購入代金分が口座から引き落とされ、払い戻しによって口座に戻ってくるという仕組みなので、収益にカウントされてしまうんですね。利益の計算がやりにくく、実際以上に収益が上がっているように見えてしまうので気を付けてください。
まとめ
デュアル資産投資は、以前は「二重資産マイニング」という名称でした。マイニングというと、高性能なPCを使って仮想通貨のトランザクションの承認に参加するビットコインのマイニングを思い浮かべてしまうため、名称変更が行われたのだと思われます。
このデュアル資産投資はビットコインのマイニングは関係なく、一般に「流動性マイニング」と呼ばれるものがベースになった仕組みです。
利回りはかなり高く設定されていますが、通常の流動性マイニングと同様に変動損失のリスクが発生しますので、利回りとリスクを考慮して購入してください。また、どちらが値上がりするかの予想を立てて預け入れることでも、利益を得られる可能性が高くなります。
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