海外FX業者は、ほとんどが日本以外の国の金融ライセンスを保有しています。全くの無ライセンスの海外FX業者は少ないです。
しかし、海外FX業者の持つ金融ライセンスにはそれぞれ「格」があり、格上の金融ライセンスを持っている会社の方が信頼性が高いと考えることができます。
この記事では、海外FX業者の金融ライセンスに関する一般的な事情や、海外FX業者が保有している代表的なライセンスを紹介します。
海外FX業者のライセンス事情
海外FX業者のライセンス事情を説明すると、日本の金融庁のライセンスを持っていないのが「海外FX業者」に分類されるので、日本のライセンスはもちろん持っていません。
OandaやForex.comなど、日本のFX業者のうち、MT4を提供している業者は実はほとんど外資系企業でですが、日本の金融ライセンスを持っているので「国内FX業者」とみなされています。IG証券も外資です。
さらに、日本の金融庁の圧力により、イギリスやオーストラリアなど、メジャーな国の金融ライセンスを持っている海外FX業者は日本人顧客を受け入れることができません。
そのため、海外FX業者の持つライセンスは、必然的に「あまり名前を聞いたことがない国のライセンス」となるのです。メジャー国以外の、金融規制が緩い国のライセンスを「オフショアライセンス」と呼びます。
日本向けに活動するのは別法人の場合が多い
日本の金融庁の圧力により、イギリスのFCA(英国金融行為監督機構)ライセンスなどを持つ海外FX業者は、日本人顧客を受け入れることができません。
しかし、FCAライセンスを持つHotForex(ホットフォレックス)やExness(エクスネス)などは実際に日本人顧客を受け入れています。
それは、FCAライセンスを持つ法人とは別の法人を作って、そこで日本人顧客を受け入れているからです。
この方法は一般的に行われていて、多くの海外FX業者が別法人を作っています。
オフショアライセンスだからボーナス・ハイレバが提供できる
海外FX業者は、たまに金融ライセンスを変更することがあります。直近だと、Tradeview(トレードビュー)が、CIMA(ケイマン諸島金融庁)ライセンスを持つ会社で受け入れていた日本人顧客を、ペルーにある別法人に移管しました。
こうした変更は、ケイマン諸島などライセンス発行国が日本の金融庁の圧力により規制を強化したことが理由の場合もありますが、もう一つ、ライセンス発行国が許可するレバレッジなどの取引条件が厳しくなり、ボーナスやハイレバが提供できなくなったケースもあります。
XMTrading(エックスエム)は2015年に、Traders Trust(トレーダーズトラスト)は2017年に、CySEC(キプロス証券取引委員会)ライセンスからそれぞれセーシェル、バヌアツに拠点を移しましたが、これはキプロスの規制が厳しくなったことに関連しています。
CySEC(キプロス証券取引委員会)ライセンスでもまだ日本人を受け入れることができますが、レバレッジが30倍に制限されています。このため、金融庁の圧力ではなく、各ブローカーが自主的にライセンスを変更しました。
海外FXの大きなメリットが使えなくなるのは困るね
このように、海外FX業者には、自由な営業を行うためにあえて規制の緩い国のライセンスを取得しているという事情もあります。
ペーパーカンパニーではない場合が多い
海外FX業者は「ペーパーカンパニー」との疑惑を持たれることも多いですが、実態のある拠点を置くことが義務付けられている金融ライセンスも多いため、必ずしもペーパーカンパニーとは限りません。
むしろ、きちんとオフィスを持っている会社も多いようです。
ただ、ライセンス国にあるのは一部の業務のみという場合もあります。詳しい内容はこのページにまとめました。
主要海外FX業者の金融ライセンス
日本で活動している海外FX業者が持つライセンスには、主に下記のようなものがあります。
規制が強力な順に1~4まで順位をつけました。
“”
評価 | 国名 | ライセンス名称 |
1 | イギリス | FCA(英国金融行為監督機構) |
1 | オーストラリア | ASIC(オーストラリア証券投資委員会) |
2 | キプロス | CySEC(キプロス証券取引委員会) |
3 | ケイマン諸島 | CIMA(ケイマン諸島金融庁) |
3 | バハマ | SCB(バハマ証券委員会) |
3 | セーシェル | FSA(セーシェル金融サービス庁) |
3 | バヌアツ | VFSC(バヌアツ金融サービス委員会) |
3 | ベリーズ | IFSC(国際金融サービス委員会) |
3 | イギリス領バージン諸島 | BVIFSC(イギリス領バージン諸島金融サービス委員会) |
4 | セントビンセント及び グレナディーン諸島 | SVGIBC(セントビンセント及びグレナディーン諸島国際事業会社) |
4 | ニュージーランド | NZFSP(ニュージーランド金融サービス提供者登録) |
このうち、イギリス、キプロス、オーストラリア、ケイマン諸島のライセンスを持つ海外FX業者は、そのライセンスでは日本人を受け入れることができないため、別法人を作っています。
日本人受け入れ可能な金融ライセンス
日本人を受け入れている海外FX業者が持っている金融ライセンスのうち、正式なライセンスと言えるのは、下記の4つのみです。
セントビンセント及びグレナディーン諸島とニュージーランドは、「金融ライセンスを持っているとアピールするためだけのライセンス」というような存在で、実際の規制はほぼ受けていません。
ここ数年を見ても、オーストラリアやケイマン諸島のライセンスが日本人受け入れ不可になったため、日本人が選べるライセンスの選択肢は徐々に減っています。
日本の金融庁の圧力のせいだと言われているよ
金融ライセンスがしっかりしている海外FX業者を使いたい場合、現状では、セーシェル、バヌアツ、ベリーズ、イギリス領バージン諸島の中から選ぶしかありません。
しかし、日本人を受け入れている法人ではなくても、グループ会社としてしっかりしたライセンスを保有していれば、別法人であっても一定の信頼性があるという目安にすることができます。
各国の金融ライセンスの詳細
ここからは、各国の金融ライセンスについて、詳しく紹介していきます。
なお、参考までに各ライセンスで要求される資本金要件も書いていますが、実際にFX会社を運営するにはもっと巨額の資金が必要です。基本金要件は、実質的な運営を行っている親会社ではなく、日本人を受け入れている現地法人に対して要求されている要件ということになります。
FCA(英国金融行為監督機構)
イギリスの発行するライセンスで、最も厳格なライセンスです。現状、FCAライセンスで日本向けに営業を行っている業者はありません。
FCAを保有している業者はExness(エクスネス)やHotForex(ホットフォレックス)などがありますが、日本人向けにはセーシェルなどの規制の緩いライセンスで営業しています。
なお、よく誤解されているようですが、XMTrading(エックスエム)は厳密な意味ではFCAライセンスは持っていません。
「FCAに登録されている」という表現には、「FCA自身が行う審査をクリアした」という意味と、「別のEU加盟国で取得したライセンスでイギリス内で営業することを許可されている」という意味があり、XMは後者の意味です。
どちらのタイプのライセンスなのかは、FCAの登録団体検索でブローカー名を入れると確認できます。
別のEU加盟国で取得したライセンス(XMの場合はキプロス)であっても、オフショアライセンスよりは厳格なので、信頼できないと考える必要はありませんが、グループとしてFCAのライセンスを持っているブローカーがいい人は、Exnessがおすすめです。
ASIC(オーストラリア証券投資委員会)
少し前まではASICライセンスを保有した海外FX業者は多くありました。しかし現在は日本の金融庁の圧力により、日本人は口座を開設することができません。
ASICライセンスで営業している海外FX業者は次々と日本から撤退しています。最近では、Vantage FXやAnzo Capitalが日本から撤退しました。
ASICライセンスを持っている法人と、日本人向けの法人を分けるという対応でも認められないようで、日本人には最も厳しい対応を取っていると言えるでしょう。
ASICライセンスを保有している業者は全体的にクリーンな経営を行っており、魅力的な業者が多いのですが、今後は名前を目にする機会も少なくなりそうです。
CySEC(キプロス証券取引委員会)
元々は規制の緩いライセンスで、かつてはXMTrading(エックスエム)も日本人向けにキプロスライセンスで営業を行っていました。
しかし2016年からライセンスの厳格化が行われたため、ほとんどのブローカーが、日本人顧客をCysecライセンスから別の国のライセンスの法人へと移管させました。
しかし、欧州ではまだCySECライセンスで活動しているので、保有しているブローカーの数は多いです。
CIMA(ケイマン諸島金融庁)
ケイマン諸島はイギリスの領地で、タックスヘイブンとして知られています。ケイマン諸島は金融業が盛んで、オフショアライセンスの中では比較的信頼性の高いライセンスとして知られています。
以前はTradeview(トレードビュー)がこのライセンスで活動していましたが、金融庁の圧力により日本人受け入れが不可となったようで、日本人顧客はペルー法人に移管されました。
SCB(バハマ証券委員会)
バハマの金融ライセンスを持った大手ブローカーは日本には進出していませんでしたが、最近INFINOX(インフィノックス)が進出してきました。
バハマは金融サービスを提供するオフショアとしては歴史が長く、FXの規制もしっかりしているようです。ただ、しっかりしすぎて現在では人気がなくなってしまっているようです。
バーチャルオフィスではなく現地に実態のあるオフィスを置くという要件は他のライセンスでも条件になっている場合が多いのですが、それに加えて、役員が実際にバハマに居住する必要があるという要件がついているのが特に厳しい条件と考えられているようです。
FX業者が保持するべき資本金の要件も、A-bookの場合12万ドル(約1200万円)、B-bookの場合30万ドル(3000万円)と比較的高いので、オフショアライセンスの中では信頼できると言えます。
A-bookは顧客の注文をリクイディティプロバイダーに直接流す方式、B-bookは業者が相手となって取引を成立させる(呑む)ことができる方式です。
FSA(セーシェル金融サービス庁)
セーシェルの金融ライセンスは、多くの海外FX業者が取得していま。取得の簡単といわれるオフショアライセンスの中でも、比較的規制がしっかりしているため、海外FX業者の中でも大手の業者が採用している場合が多いです。
顧客資産を海外FX業者の資産とは分けて管理する分別保管が義務付けられているため、海外FX業者が万が一倒産した際にも安心です。
なお、セーシェルのように分別保管が義務付けられていない金融ライセンスを保有している業者であっても、ほとんどの海外FX業者は分別保管を行っていると公表しています。セーシェルの場合はルール上義務付けられたもの、他のライセンスでは海外FX業者が自主的にやっているものという違いがあります。
FX業者が保持するべき資本金の要件は5万ドル(約500万円)なので、資本金の面では厳しくはありません。
VFSC(バヌアツ金融サービス委員会)
海外FX業者のオフショアライセンスの中では、最も取得しやすいランクのライセンスです。しかし、2019年に規制内容がやや厳しくなり、顧客保護の度合いや信頼度は若干向上しました。
VFSCライセンスで活動するTitan FX(タイタンFX)は、金融ライセンスの規制とは別に、ブローカーと顧客とのトラブルを仲裁するFinancial Commissionに加盟しており、独自の顧客保護制度を用意しています。
FX業者が保持するべき資本金の要件はセーシェルと同じく5万ドル(約500万円)なので、こちらもあまり厳しくはありません。
IFSC(ベリーズ国際金融サービス委員会)
こちらも、海外FX業者のオフショアライセンスの中では、最も取得しやすいランクのライセンスです。
グループ会社も含めてもこのライセンスしか保有していないのであれば、信頼性は低くなります。
XMTrading(エックスエム)も保有していますが、日本人向けにはセーシェルのライセンスが適用されます。
資本金要件は、セーシェルやバヌアツよりも高い50万ドル(約5000万円)です。
BVIFSC(イギリス領バージン諸島金融サービス委員会)
バヌアツ、ベリーズと並んで取得しやすいライセンスです。保有している海外FX業者はほとんどなく、最近日本に進出してきたeasyMarketsがこのライセンスで活動しています。
Exness(エクスネス)も保有していますが、日本向けにはセーシェルライセンスで活動しています。
資本金要件は、一定ではなくケースバイケースだそうです。
SVGIBC(セントビンセント及びグレナディーン諸島国際事業会社)
ライセンスにSVG(セントビンセント及びグレナディーン諸島)と書いてあった場合、そもそも金融ライセンスではありません。
オフショア国の中には、国内で金融ライセンスを保有することなく金融活動を行うことが認められている国もあり、セントビンセント及びグレナディーン諸島のIBC(国際事業会社)もその枠です。
そのため、無ライセンス業者とほぼ同じと考えた方がいいでしょう。
NZFSP(ニュージーランド金融サービス提供者登録)
ニュージーランドの金融ライセンスも、「金融」と名前がついていますが、ニュージーランドの金融当局がブローカーの活動に関して規制を行っているものではないので、ライセンスとしてはほとんど意味がありません。
ニュージーランドには金融当局が発行する正式なライセンスが別に存在し、ニュージーランド国内でFXサービスを提供するにはそのライセンスを取得する必要があります。
それに対し、FSPは管轄も金融当局ではなく、「ビジネス・イノベーション・雇用省」となります。厳格な規制基準はなく、有罪判決を受けた人がFSPになれないようにする、マネーロンダリングを防止するなどの、より一般的な目的のために設けられている制度です。
まとめ
金融ライセンスは、日本人が口座開設できる法人が保有ライセンスが直接的には重要ですが、グループ全体のライセンスを見ることも判断基準の一つとなります。
なぜなら、海外FX業者のメリットであるハイレバやボーナスを提供するために、どの海外FX業者も規制の緩いオフショアライセンスで営業しているからです。
日本では規制上できないサービスだね
海外FX業者を使う以上、規制の緩いオフショアライセンスしか選択肢がないのですが、Exness(エクスネス)やXMTrading(エックスエム)など、本社はもっとしっかりしたライセンスを保有しているケースも多いため、そのライセンスを信頼性の目安と考えるのがおすすめです。
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